M-1予選で見えたもの

こんばんは。

M-1の一回戦を突破して浅草に行きたかったけど、一回戦で散った人です。

M-1予選というのは、ちゃんと規則にそってエントリーさえすれば誰でも、大勢の観衆の前でネタを披露することができるんです。

これって地味にすごい事ですよね。

一人1000円払ってエントリーするだけで、こんなにも貴重な経験ができるんです。

そう考えると、もっともっと出場者が集まってもいい気がしますが、40何組くらいしか集まらないとは、やはり北海道のお笑いは出遅れてしまっている気がします。


前回までの記事では、M-1予選で負けた話をしました。

今日はその経験から見えたことを書きたいと思います。


人を一番成長させるのは失敗体験ですが、もし他人の失敗体験を我がことのように聞くことができれば、それはもう失敗せずして失敗したと同じ、つまり成長への近道なんですね。

だから、僕は自分の失敗はどんどん共有していくし、

僕は他人が失敗した話を前のめりになって楽しそうに聞くヤバい人です。

おきゃくさんあったかい

まず、開演前に観覧希望者が長蛇の列をなしていたのがまず衝撃だったのですが、

それ以上に、アマチュアのネタもちゃんと見てくれるということが意外でした。

想像ではもっと「つまんねえな」みたいな空気を出してくると思ってたんですが、ちゃんと目をそらさず見てくれて、面白ければ笑ってくれる。

お笑いというコンテンツの持つ力の片鱗をまざまざと見せつけられました。

時代が移り変わり、娯楽がデジタルやスマホに移行しても、生の笑いを欲している人がこんなにもいるんだと。


2分は短い

なんか長ネギは長いみたいな文言ですが、本当にこれは伝えたい。

M-1の一回戦のネタ時間は2分しかありません。これがきつい。

皆さんがTVで見る決勝戦のネタ時間は4分で、4分もあれば凝ったネタが作りやすいです。

僕らもネタ作りをしながら、面白いなと思うネタはやはり4分を超えてしまっていました。

最初に訪れる難関は、2分でいかに面白く作るかということ。

面白いと思うネタのストックから、ボケやツッコミを削っていき、なんとか2分におさまるように調整していくという作業を繰り返しました。でも、この方法自体が間違いなんですね。

2分なら2分のネタを作るべきなんです。


わかっていても「声を大きく」はむずい

最後に審査員の方がわざわざ、全体の声の大きさに言及していたので重要なポイントなんでしょう。プロとアマの差がそこに出ているということでもあるかもしれません。

でも、こんなことはほぼ全員がわかっていて、全員もれなく「大きい声を出そう」と意気込んで舞台に立っているはずです。

それをわかって心の準備をしていても、緊張とか、環境やマイクの違いとかで、練習通りの大きな声を出せなくなるということが起こるわけで、

審査員の方は「緊張せず、動じることなく、臆せずに大きな声を出せ」ということを含んで言っているわけですね。

初舞台ではなかなか無理な話です。

こればっかりは場数を踏んでいくしかありません。


靴下はちゃんと履く

なぜか当日出かける前に思いつきで、革靴の下に、くるぶしの下までしかないドアノブカバーみたいな靴下をはいて、パっと見石田純一みたいなスタイルで臨んだんですが、

会場入りと同時に靴擦れを起こし、ただただ障害でしかなかったのでちゃんとした靴下を履きましょう。


カルピスの誘惑に負けない

栄養満点で古くから愛されるカルピスですが、飲んだら喉が粘っこくなった経験、皆様にもあると思います。

僕は漫才の出番前にカルピスを飲んだことで、漫才中に100倍に濃縮されたカルピスが喉から発射されそうになりました。

折り紙を折る仕事の前に、ポテチを食べて手を油でギトギトにはしませんよね?

それと同じで漫才の前にカルピスは飲まないほうが良いでしょう。

折り紙を折る仕事ってなに?


自分らしさ

M-1グランプリ2018決勝の審査員席で、サンドウィッチマンの富澤さんが繰り返し言っていた「二人の人間味」という言葉。

勝手な解釈ですが、その意味の端っこにほんの少し触れられた気がします。

粗品のツッコミは面白いけれど、誰でも粗品のツッコミを真似すれば面白くなるわけじゃないように、

その人にはその人の人間性に合った、言葉、声量、音程、間(ま)があって、もっと言うとコンビ二人*のバランスの強弱もあって、それが発揮されてかみ合ったときに一番面白くなるわけですね。

(*コンビふたりと書いたのであって、コンビニエンスストア出身の人=コンビニ人ではありません。)

プロの芸人たちはそこまで考えてネタ作りをしているわけです。すごい。

アマチュアはそんなところまで考えてないし、わからないので、台本の文字が面白ければ舞台でもウケると勘違いしてしまう。

僕らはたまたま、「こんな大舞台での経験なかなかない」ということで、あえていろんなボケ方やツッコミ方を無理やりネタに詰め込んでウケたりウケなかったりの反応を見ることができたので、M-1予選を通してなんとなく自分のスタイルが見えた気がします。

面白くなるにはお客さんの前での試行錯誤が絶対に必要で、僕ら「アオヒゲ」は、これからの人材にそういう場所を与えられるような街にしようとしているわけです。

365日公演のお笑い専用劇場があれば、絶対に面白い芸人が育つに決まってるんです。

ナイツ塙さんの新書「言い訳」を買って読んでいます。

第一章にはこんなことが書かれています。(要約)

「バッターがいないところで投げる練習が無意味なように、漫才もお客さんがいないところでやっても得られるものはほとんどない。漫才はお客さんと一緒に作っていくもの。そういう意味では、一生練習していくものなのかもしれない。」と。

M-1決勝の審査コメントが話題になった塙さんですが、彼の漫才観は遥か雲の上に突き抜けている感じがします。

そんな塙さんの本に、僕らの活動の後押しともなるような言葉が書かれていて、俄然燃えてきました。

めちゃくちゃお勧めの本です。テクニカルな話も書いてあったりします。

(↓ナイツ塙さんをあまり知らないという人はこの動画をぜひご覧ください。どんな人かわかります。)

(執筆者:えのき)

0コメント

  • 1000 / 1000